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流石に疲れて来たし、そろそろ今夜の寝床を探そうと思っていた時。
ふと夜空を見上げると、美しい満月が輝いていた。
ここが何処なのか、未だに全然わからないけど、見慣れた月を見ると少しほっとする。
今夜は月がよく見える場所で寝ようかな。
そんなことを考えながら、何気なく見渡した視界の隅に微かに灯る明かりが見えた。
私は逸る心を押さえつけ、慎重にそちらへと向かう。
獣は火を怖がるだろうから、その明かりを灯しているのは人間に違いない。
だったら、きっと私を助けてくれるはずだ。
そんな淡い期待は、明かりの主を目にした瞬間に吹き飛んでしまう。
そこにいたのは、薄汚れた衣を身に纏う男達。
焚き火を囲んで、食事をしているようだ。
見るからに堅気ではなさそうな人相をしていたけど、それ以上に恐ろしいモノを私は男達の傍らに見つけてしまった。
大声で何やら笑いながら食事をしている男達の足元に横たわる大きな物体。
成人男性くらいの大きさがあるそれは、ぴくりとも動かない。
そして、その周囲に広がっている赤黒いモノ。
あれは…………。
「なんだぁ?お前何者だ?」
無意識に後ずさっていた私の、そのさらに背後から突然声がかけられる。
暗闇の中からゆっくりと姿を見せたのは、焚き火を囲む男達と同じような姿をした二人組。
その手に握られた大振りの刃物が、月明かりに照らされて鈍く光を放っている。
せっかくさっきまでは綺麗な月を見て良い気分になっていたのに、そんな気持ちは一瞬にして消え去ってしまっていた。
今私の心を支配しているのは、あの地面に転がっていた物言わぬ物体と同じになってしまうという恐怖のみ。
「なんでこんな所にガキがいる?
まぁ良い、お前ちょっと……あ!待てやコラっ!!」
訝しむように私を見ていた男が一歩こちらに踏み出した瞬間。
私はその場から全力で逃げ出した。
「このガキ!!止まれっ!!」
全速力で森の中を走る私の後ろから、男達の怒声が響く。
止まれと言われて誰が止まるものか。
男達に捕まったら最後。
私がどうなるかなんて、分かりきっている。
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