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いつもの通りに犬が吠え出して、
玄関まで迎えに出て、「おかえりなさい!」と、笑顔でドアを開けた。
…………だがそこには、旦那ではない、見知らぬ人間が立っていて、
「あなたの旦那なら、さっき殺しておいたから。だって毎日後を尾けて好きってアピールをしてきたのに、ちっとも私に振り向く気配もないんですもの」
長い髪の隙間から、やけに赤い唇を覗かせ、にぃ−−っと歯を剝いて笑って見せた。
玄関前には、背中を刺された旦那がうつ伏せに倒れていて、女のどぎつい位に真っ赤な口紅と同じ色の血溜まりが、じわじわと広がっていくのを呆然と眺めながら、
(ああ、犬は、旦那の方ではなく、このストーカーの女性に向かって、ずっと吠えていたんだ……)
ようやく、その理由が知れたことに、知らず知らず口元が引き上がると、にぃーっと笑いがこぼれた……。
終
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