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ゲレンデの斜面を半分ほど滑降した辺りで4人は一旦止まり、男たち二人はコースの端を示す旗の外側の斜面をのぞき込んだ。
「いけるな?」
金髪の男がつぶやき、あごひげの男がニヤッと笑いながら言う。
「おう、俺はスノボに変えるぜ」
「じゃ、俺があまえのスキー板背負ってやるよ」
男たちに手招きされてコースの縁に来た女二人は少し不安そうな表情になった。黒髪の女が言う。
「え? そっちの方に行くの? それコースの外じゃないの?」
金髪の男が笑みを含んだ口調で答えた。
「だから面白いんじゃん。いわゆるバックカントリーってやつね」
ボブカットの女がそれでも不安そうに言った。
「それ違反にならないの?」
「ここでは別に禁止されちゃいねえよ。スキー場の管理区域外ってだけ。だから誰でも滑っていいんだよ」
あごひげの男がスキー板を外しスノーボードに乗ってバランスを確かめながら女たちに言った。
「自己責任で滑れって事さ。自然そのままの条件で滑れるんだから、こっちの方が絶対楽しめるって」
男二人がためらう事無くコースの外へ出て行き、女二人もおそるおそる後に続いた。
高い樹木が並んでいる中に、狭い空白地帯があり、確かに真っすぐ滑り降りるだけなら彼女たちにも出来そうだった。
ボブカットの女がふと空を見上げて言った。
「ねえ、なんか雪降って来たよ。ホテルの人も今日の山の天候は変わりやすいって言ってたし、ほんとに大丈夫?」
金髪の男が腕を大きく振って女たちを誘いながら言った。
「これぐらい平気だって。スキー場に雪が降るのは当たり前じゃん。さ、行こうぜ」
それから4人はコース外の斜面をそれぞれ滑走した。最初はおっかなびっくりで腰が引けていた女二人も少しずつ慣れたようで、樹木の列のすぐ脇のゆるやかにカーブした場所を歓声を上げながら滑り降りる。
スノーボードで滑っていた男が最前列に出た時、何か大きな四角い物が樹木の壁の向こう側から飛んで来た。
雪の表面に突き刺さったその物体に、スノーボードがもろに乗り上げ、あごひげの男の体は宙で後ろ向きに一回転して、雪面に叩きつけられた。
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