雪女に赤い花束を

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 例のスキーコースから外れた斜面には、幅2メートルほどの板がいくつも並んでいた。その板の上を歩いて行くと、大きな四角い建材が雪に斜めに突き刺さっている場所に着いた。  林の樹木の列の向こう側には、半分ぼろぼろに破壊された2階建てのプレハブの小屋が見えた。  何か所かに杭が立ててあり、黄色い進入禁止を示すテープが張り巡らされていた。さっきの自衛官に案内されてテープで囲われた場所に近づくと、大きな足跡がいくつか雪面に見て取れた。 「遠山君、どう見える?」  渡にそう聞かれた遠山はかがみ込んでじっと雪の表面を見ながら言った。 「確かに足跡ですね。二足歩行の物だ。しかし裸足じゃない、何か履いてましたよ、その巨人とやらは」 「靴でも履いていたという事か?」 「どんな履物は分かりませんが、何かを足に身に付けていた事は確かですね。そうじゃないと、こんな平べったい跡にはならない」  渡が自衛官に尋ねる。 「その巨人はどの程度の大きさだったか、何か情報はありますか?」  防寒コートを羽織った自衛官は少し首を傾げながら答えた。 「はあ、無事だった女性の一人が言うには、東京お台場にある、実物大のアニメのロボット、それよりちょっと小さいぐらいだとか」 「実物大のロボット?」  渡がそう言うと筒井がうれしそうな顔で右手を上げた。 「あ、それ、あたし分かります。機動兵士ガンダマの事ですよ。あたし何度も見に行ってますから」  筒井がスマホを取り出して自撮り写真を見せた。それを見た渡がうなずいた。 「なるほど、聞いた事はある。それで、このロボットのレプリカは高さはどれぐらいなのかね?」 「ええと、アニメの設定だと身長18メートルですね。それより少し小さいというなら、ううん、15メートル前後じゃないですか?」 「身長15メートルか。まあそれでも十分に巨人と言えるな」
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