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誰かのせいにしなければいけないという固定観念に囚われていた。それが間違いだとようやく気付かされた瞬間だった。
騒つく広間から、ボソボソと王都民の声が聞こえてきた。先程までとは全く違う頼りない声だ。
「す、すみませんでした、王様…」
「我々は忘れていたのです。努力すると言う事を。どうかお許し下さい。」
「誰かを助けたいと思う気持ちよりも、自分が助かりたいとばかり考えていました。」
「どうかお許し下さい…王様!
我々に慈悲を……!」
急激に変わり始めた王都民の様子を見て、ムヤイヤドやルシュディー、それにアメナはほっとした顔をした。
それから皆で一斉にザイード達に向かって手を振っている。
「お前達……」
ザイードはそれに感極まり、思わず泣きそうになる。まだ未熟な子供のような部分もある。
しかし感情を抑え王として、空に手を突き出し、テラスから応えるように手を振った。
何て頼もしいのだろうか。皆が自分のピンチに駆けつけてくれて救ってくれた。
ザイードの胸に熱い気持ちが込み上げる。
「ザイード様……!国王様!
私達はいつだって貴方の味方です!
なんせ私達は【殿下を幸せにし隊…改め国王陛下を幸せにし隊!】の会員なんですから!」
アメナが二つ結びした髪を揺らし、嬉しそうに手を振っている。
そう。
当初はアメナとアクラムだけだった【殿下を幸せにし隊!】は、今やムヤイヤドとルシュディーだけでなく何とマタルの町民全てがそうだった。
誰もがザイードの幸せを心から願っていたのだ。
彼に救われたから。
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