ぼくらの希望の星

18/20
前へ
/20ページ
次へ
 そうだ、塾でのあの集団感染さえなければ――ありなが志望校を変更することもなかったんだ。僕の(となり)にいただろう、今までとなにも変わらず。そのはずだったのに。 「O高の()(えり)(かつ)()いいなぁ」  けれどありなはあいかわらず、朝から明るい声を出して余力十分だった。 「()めても、なんもでねーよ」 「それに(あお)、また背が伸びたんじゃない? 今、何センチ?」 「百八十三センチ」 「ひゃー、(うそ)でしょ。小学生のころはわたしのが高かったのにっ」 「いつの話してんだよ」 「きっとまだまだ()びるねっ。楽しみ!」  その時ちょうど僕の乗るのとは反対方向の電車がホームに入ってきた。 「あっ、電車来たっ。じゃあまたね、(あお)!」  大きく手を()り、ありなが車両に乗りこむ。ベルが鳴って扉が閉まる。あっという間に満面の笑顔が遠ざかっていく。9b2aa188-c958-4b46-aa82-9067aa76b140
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加