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「あっ、来た!」
ありなが力強く叫んだ。
「ほら、あそこだよ!」
「あそこって、どこだよ」
「んもう、あれだってばっ」
ありなは右方面の夜空にむかって自分の手をさかんに振った。僕は目をすがめる。なんだ? あの白い点か。飛行機――にしちゃずいぶん高速だ。でも流れ星にしてはゆっくりすぎる。
「いやっほう、ISS! こんばんはー!」
次にありなが発したその言葉を反芻するのに、僕は五秒ほどを費やした。
「……そうか、国際宇宙ステーションか!」
「そうだよ! あそこに野口聡一宇宙飛行士もいたんだよ、五月までだったけどね!」
黄色い歓声をあげながら、ありなは熱心にISSをスマホで撮り始める。
「ああどうしよう、ワクワクが止まらないっ。だってあんな上空に人がいるんだよ。あれぞまさしく『希望の星』じゃない? ね、そう思うでしょ?」
「でもISSって、じつは常に高速で地球に落下し続けてるだけなんだぞ」
「そうだけどっ。飛んでるじゃん、ほら」ありなはどんどん遠ざかっていく光を名残惜しげに見送った。「この先、人類はどこまで行くんだろう。火星とか……? 夢だよねぇ」
「その前にまずは月探査だろ。現実的には」
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