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僕はありなの興奮にやや感化されながら、身近な天体を指さした。
「なんでもあそこには、氷があるらしいしな」
「そうそう、知ってる。それに月まではたったの三十八万キロだしね!」
「おい、たったのとか言うな」
「えー、なんでも信じれば夢は叶うんだよ」
するとありなはなんのてらいもなく、そう言い切った。
「だって野口さんが前に言ってたもん。『今はコロナ禍だけど、闇は永遠には続きません。希望を持ち続けましょう。宇宙から見ていて明けない夜はないです』って」
「へえ。なんか恰好いいな」
「でしょう。わたし、コロナになってから今まで聞いた大人の言葉の中で、一番その台詞に納得したの」
「ふぅん」
「それにこんな重たい空気の中で、他人を勇気づける言葉がさくっと吐けるのも、すごいなって思った」
「まあ宇宙飛行士ってのは頭脳明晰、文武兼備、人類最高峰の職業だからなー」
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