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ある日、わたしの朝食を作ってくれている家政婦さんが、「近頃食料品もそうなんですけれど物価が何もかも上がりましたね」と言った。わたしは、タヌキ以外のことでは世間に無頓着だったので気がつかなかったが、新聞を改めて読むと、確かに消費者物価指数は上昇していた。
原因は明らかだった。
タヌキ札が大量に出回ったせいで、お札そのものの価値ががた落ちし、反比例するように物価が上昇していったのだ。これはこれでまずいことだった。
「日銀が金融緩和する十年も前からタヌキの金融緩和が始まっていたのですよ」
タヌキは得意そうに言った。
わたしはずっと「自分がこのタヌキを利用している」と思い込んでいたのが、実際には自分がこのタヌキに使われていたことを悟った。このタヌキは日本経済を支配下に置くために裏で画策していたのだ。わたしは我が身の不明を恥じた。
そして、その夜。
わたしはタヌキを川に捨てに行った。二度と人間に見つからないように重りをつけて。了
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