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第5話 わがまま
「大河、キスして。」
「バカなのか?」
大河があきれた顔で言った。
「これで解決できるなら安いもんよ。」
「知るか。オレを巻き込むな。」
「大河はキスしたことあるの?」
「…ある。」
「だったら、いいじゃん。お願い。」
「お前さぁ…」
「自分でもどうしようもないこと言ってるってわかってるんだから。でも、小さい頃からの夢だったんだよ、映画に出るの。主人公に意地悪する嫌な役だけど、セリフだってほっとんどないけど、あのシーン、わたしの顔アップになるの。」
「次がまたあるだろ?」
「次があるなんて保証ない。明日には消えてなくなってるかもしれない。」
気がついたら、涙がぼろぼろこぼれてた。
わかってるよ。
大河の気持ちなんて無視してることだって。
無理なこと言ってるのはわかってるよ。
でもそれだけじゃない。
わたしのせいで、今までがんばってきたみんなの努力も無駄になるなんて絶対にダメなことだから。
「それでうちの高校の制服着て来た?」
「うん。少しでも…」
「それ、逆に傷口えぐってる。」
「…ごめん。何にも考えつかなくて。」
「それにさ、あいつに見せなきゃなんないんだろ?」
「えっと…目の前でするとか?」
大河は大きなため息をついた。
「ちょっと来い。」
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