第8話 プレゼント

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第8話 プレゼント

「何やってるの?」 「宿題。」 「ちゃんと宿題するんだ。」 「普通に高校生だから。」 毎日のように大河の部屋に来て、すっかり慣れてしまった。 暇つぶしに広い部屋を見て回っていたら、本棚の端っこにこの部屋には似合わないものを見つけた。 ピンクのリボンがついた小さな箱。 「これ何?このリボンがかかった小さな箱。」 少し間があってから答えが返ってきた。 「欲しかったらやるよ。」 「本当?ありがとう。」 早速リボンをほどいて包みを開けた。 中には十字架のチャームがついたシルバーのブレスレットが入っていた。 女の子に今人気のブランド、JILEのものだった。わたしも好きで新作が出るたびにチェックしている。 でもこれは初めて見た。 「かわいい!本当にもらってもいいの?」 「いいよ。もういらなくなったやつだから。」 「へぇ。」 箱から出したプレスレットを早速つけてみる。 前に、璃世が大河の彼女のフリをした時、璃世がしていたネックレスと合わせたら似合いそう… 違う。 あのネックレスに合わせて買ったものだ。 「R」の刻印が入ってる。 「これ、璃世にあげるつもりだった?」 机に向かってずっと背を向けていた大河が振り向いた。 「やっぱ返して。」 「何で?」 「感じ悪いよな。ごめん。他人に買ったものもらってもいい気がしないだろ。」 「大丈夫!わたしそういうの全然気にしない!このブレスレット、かわいいから嬉しい。わたしも『R』だしね!」 「…ならいいけど。」 「これJILEのだよね?初めて見た。新作?」 「…オーダー。」 どこにもない、世界でたった一つのもの… 「何であげなかったの?璃世喜んだと思うよ。」 「やる前に気づいたから。」 璃世は、大河の友達と付き合ってる。 璃世は、バカだな。 世界で一番大切にしてもらってるのに。 ブレスレットをした腕を天井に向けてみた。 ライトが反射してきれい。 同じ顔でもわたしは璃世にはなれない。 2週間後、全部の仕事が終わる。 そうしたら、大河とわたしは破局する。
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