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エピローグ
「ニャア」
リディアは目を閉じたまま、お腹の上に乗っているベティを撫でた。
「おはよう。ベティ。なんだか不思議な夢を見ていたみたいだわ。あんまり覚えてないのだけれど」
リディアがベッドから出ると、ベティは床へと飛び降りた。
「全身が痛いのだけれど……」
そこまで呟いて彼女はびっくりする。
どうしてお気に入りのワンピースを着て眠っていたの? それに、足のケガも酷いわ。お尻も痛いし……。
「リディア。朝食の準備ができているよ」
ドアの向こうから祖母の声が聞こえた。
「はーい。すぐに行くわ」
とにかく、こんな状態で出て行ったら心配させてしまうわ。
リディアはそう思い、急いで丈の長いワンピースに着替えた。
「あら? そういえば、何かおばあさまに伝えることがあったような……」
しかし、思い当たることはない。
「私、昨日何をしていたのかしら?」
ベティに問いかけてみるも、彼女はニャアと鳴くばかり。
あり得るとしたら……。リディアは考える。
「うーん。本を読んでいて眠ってしまったのかしら。それから、寝ぼけてベッドから落ちたとか」
「ニャア!」
「リディア。コーンスープが冷めてしまうよ」
コーンスープという言葉を聞いたとたん、リディアのお腹は空腹を思い出したかのようにぐうっと音を立てた。
「はーい。今、行くわね」
リディアは大きな声で返事をして部屋を後にした。
「ニャア」
「ふふ。あなたもお腹が空いたのね」
ベティは小さく返事をする。
それはいつもと変わらない、朝のなにげない風景だった。
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