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まっすぐに向かったのはチェックインカウンターだ。
エールフランス空港の『J』のカウンターの前までやってくると、私は晴翔の名を口にした。
「搭乗手続きを済ませたかを教えていただきたいんです!」
「申し訳ありません。個人情報になってしまうので、確認番号を知らない場合はお教えできないことになっております」
「そう……ですか……」
確かに本人でもなんでもない人間に、易々と個人情報を漏らすようなことはできないだろう。
仕方なくカウンターを離れ、再びスマホを確認する。
ディスプレイに表示された時刻は十二時五十六分。
この時点で搭乗手続きを済ませていなければ飛行機には乗れない。
エールフランス航空のカウンター前に並ぶ人も、並ぼうとしている人もいない。
飛行機に乗っても乗らなくても、今いる場所に彼は現れないだろうことは想像できた。
大きく深呼吸し、目を閉じる。
会えなかった。
ここまで追って来たけれど、やっぱり会えなかった。
でも、やっぱり諦めきれない。
覚悟を決めて、私はゆっくりと瞼を押し上げた。
パチンッと両手で頬を弾くと、うんと大きく頷き歩き出す。
ゆっくりと滑走路が見える窓へ近づくと、外を眺めた。
いくつも飛行機が停まっている。
エールフランス航空社のロゴマークの入ったボーイング機も、だ。
――追いかければいい。
目の前に青い空が広がる。
どこまでも高く伸びやかな空はどんなに手が届かなくても、途中で途切れたりはしない。
彼がどこにいようとも、空は繋がっている。
それなら追えばいい。
追いかけていけばいい。
彼を失うくらいなら、嫌と言われるまで追い続けたほうがずっとつらくないから。
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