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 魔術や魔法が許されている世界。魔物が存在する世界。彼らはこの世界を「魔界」と呼ぶ。  その世界で、魔物である「魔獣(ビースト)」、「生屍(アンデッド)」、「獣人(セリアンスロープ)」、「竜族(ドラゴン)」はそれぞれ支配者(ルーラー)と呼ばれるリーダーを立て、更にそれを取りまとめる大支配者を中心に、人間と極力交わらないように生きている。  だがしかし、1900年代現在。魔界は酷く不安定な情勢に陥っていた。  20年前、大災厄をもたらした魔女が討伐され、そのすぐ後、当時の大支配者が死亡した。大支配者は竜を倒したことで種族平等を実現した、偉大なる魔女であった。  魔界で悲しみの声が上がり、混乱が起こる中、情勢を立て直したのが現在の魔獣の支配者、生屍の支配者、そして先代の獣人の支配者である。  特に前獣人の支配者は災厄の魔女討伐にも多大なる貢献をし、率先して魔界をまとめ上げていたのだ。その成果もあり、その後何年かは情勢も、大源(マナ)も安定していた。  しかし、事態はそれだけでは終わらなかった。獣人の支配者も何者かの襲撃によって命を落としたのだ。大支配者死亡に続き、獣人の支配者不在に、魔界は不安や恐怖という負の気に染まり、特に獣人の間では小さな紛争が数多く勃発、さらに獣人たちの不安を利用して悪どい商売を行う者で溢れ返り治安が悪化した。  時は流れ、支配者死亡から8年。ついに新たな支配者が即位した。  名をクライヴ・レルフ。14歳。  前支配者、アーサー・レルフの息子であり、レルフ家の長男として生を受け、史上最年少で支配者の座についた。  即位当時は各種族の王家や竜族からの反発が強かった。だが、それ以上にこのクライヴ・レルフという少年は強かで冷静だった。  この各者からの反発を真っ向から受け止め、そして叩き折ると淡々と宣言したのである。
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