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人間の生活をさせましょう
仲良く首をかしげる夫婦、旅行でさらに絆を深めたのは良い事だ、いい事だがこれは見逃せない!俺は史子の腕を掴んだまま母さんを手招きして史子の部屋に連れて行く、史子の部屋を見た母さんは
「え、なんでこんなに散らかっているの!?」
流石にやばいと思ったのか史子は黙って明後日の方を見ている、父親は、ハハと笑う
「史子、ちゃんと食べ物食べていたんだねぇ、あれ?着替えが散らかっているってことはまたお風呂入っていないのかい?駄目じゃないかせめて3日に一回は入りなさいと」「まって!お風呂入っていないの!?」
母さんの言葉にあれ?もしかしてヤバイ?見たいな顔する誠治さん、俺は史子から手を離す、コイツまじかと見ていれば史子は、ムスッと不機嫌顔でパソコンに向かって行く
「ごめーん弟に邪魔されちゃって!」
いやいやさせるかよ、と俺は、画面に手を置く、
「ちょっと!邪魔しないでよ!」
「通話相手に聞こえるように自己紹介しても良いんだぞ」
俺がそう言えば「ごめん!都合悪くなった!抜けるね!」
と言って素早く通話から抜けて何かをしてからパソコンを消した。
そして静かに母さんが言う 。
「ちょっと話し合いましょうか」
その顔は静かな怒りを感じた。
そして4人でダイニングに行く、静かなダイニングテーブルに史子父子、俺母子でダイニングテーブルの両側で座り向かい合う、ぶすっとふてくされる史子と気まずそうな父親の誠治さんに母さんは優しく話す
「誠治さん、まさか今まで全部、誠治さんがしてあげていたの?」
母さんの言葉に父親は悲しそうに語る
「前の奥さんは事故死でね、赤信号無視の車から史子を守ろうと強く抱きしめてくれたから史子は目立つ傷もなく無事だった。けど自分を強く抱きしめていた腕が緩くなって動かなくなった彼女を見たのがショックだったのか、自分が悪いと思っているのか塞ぎ込んだ子供になってしまってね、でもゲームと出会ってゲームをしている時は元気だから止められないでいたらこんな感じになってしまって、最低限の生活はしてくれる様には頼んてるんだけどねぇ」
「そういう事だったの・・・」
ヤバイ、母さんが心打たれてる、母さんはこういう話に弱いんだ、自分にとっていい流れになりそうで史子はちょっと期待した顔になる
「いや、もう高校生、しかも受験生のはずだろ、ゲームばっかりやってる暇ないだろ受験勉強は?」
俺がそう言えば余計なことをと史子は俺を見る、そんな顔怖くも無い睨み返していると誠治さんがのほほんと言う
「うーんでも史子は成績は程々にいいよ無遅刻無欠席だし・・・たまに授業中寝てるらしいけど・・・・」
それを聞いて俺は怒る
「授業中寝てたら意味ないだろ!史子!ゲームは夜22時までだ!」
それに史子は冗談じゃないと怒る
「ゲームは22時からが盛んなんだよ!そんなのありえない!」
「ならお前の通話中に乗り込んで自己紹介しても良いんだぞ」
「それはダメ!!」
睨み合う俺達、小さく可愛らしい顔のため凄んでいても全く迫力などなく、さしてダメージは無い、睨み合っていたら史子はその大きな目に悔し涙を溜めだす、だからといって俺も引く気はない
「風呂は毎日入って朝昼晩きちんと飯を食う!それなら0時までは許してやる!てか宿題とかはいつしてんだよ」
「宿題は学校で終わらせてる、勉強なんてそれくらいで十分でしょ」
いやいやいや、お前受験生だろうが!
「受験勉強は!?」
「そんなのしなくてもだい」「大丈夫なわけあるか!」
「大丈夫なの!!」
「大丈夫じゃない!!!」
またも睨み合う俺達、母さんはなんだか楽しそうで誠治さんはあたふたとしている
「よーしわかった!なら今度の学期末テストで1位でも取ってみろよ!そしたら勉強のことは何も言わないし夜1時まで許してやるよ!」
「短い!!5時!!」
「あほか!ほぼ朝だろ!1時だ!」
「なら4時!」
「1時だ」
「3時!!!!」
「それ以上ごねると0時半までにするぞ」
「ぐ、ううううう、い、1位をとれば1時までなのね」
「あぁ取れるものならな」
「言ったわね!!」
「あぁ!できるものならやってみろ!」
「やってやるわよ!」
ふん!と睨み合っていた目線を同時にそらす、どうせ無理なことだ、とりあえずこいつの生活環境どうにかしないとなと思うがそこのところは母さんが協力してくれるだろう。
一緒に生活する以上、隣の部屋がゴミ屋敷にでもなったら困る、出来るだけ人間の生活にしてやる!と心に決めたのだった。
その後史子は母さんに風呂に連れて行かれて、悲鳴が聞こえたと思ったら、母さんのシャンプーでも使われたのかサラサラの髪で前髪も切り揃えられて、膨らみはないがスレンダーなスタイルの良さで可愛い女の子のパジャマ姿で史子が出てきた時はその見た目ならイジメとかも無いだろうになぜ顔を隠すのかと思う、そして自分も風呂に入ればもう22時、史子の部屋を覗けば案の定ゲームをしている。入り口から「もう22時だぞ、」と声をかけても、
「今いい所!」と言ってやめようとしないので「俺の名前はかさ・・・」まで言うと「ごめん!今日はここまで!」と言って慌てて通話を切って俺を睨む
「睨んでも方針は変えねぇぞ」
史子は悔しそうな顔をしながら布団に潜る
「何してるの、もう寝るんだけど」
「寝たら出てくよ」
「寝るまでいるつもり!?」
「良いから目を閉じろよ」
ぐっと悔しそうな顔をしながら目を閉じる史子、俺は持ってきた台本を黙読しながら史子が寝るのを待つが、史子はどうにか騙せないかと寝るフリをしているが、俺を誰だと思っている実力派イケメン俳優だぞ、実力は折り紙付きだ、素人の寝たフリくらいすぐ見抜く
しばらく狸寝入りしていたら、史子は本当に寝てしまったようで一定のリズムの寝息が聞こえてくる、どうも演技ではないなと確認してから俺は部屋を出るのだった。
それから俺はちゃんとした生活が出来ているようなら0時に、出来ていないようなら22時に史子が寝るまで史子の部屋で過ごす、史子はいやいやながらも布団に入るので俺は卓上机を持ち込んで宿題やテストの予習たまに台本読みをしながら史子が寝るのを待つと言うのが普通の生活になってきた。食事も朝きっちり食べさせて昼は母さんの弁当、夜は地方ロケで俺が居なきゃ母さんが史子に食事をとらせているらしい、脅しは弟の本名言っちゃおうかなぁ!と言う脅しをかけて無理やり食事の席に座らせているらしい、GJ母さん、
おかげで史子は俺を見るたび害虫でも見るような目をする物だから面白い、大体の女性には色目を使われる。嫌われるのは初めてだ、ちょっと楽しいなと思いながら家で徹底的に史子に人間の生活をさせる、それが今の俺の楽しみになっていて楽しそうにしていたようで現場で「最近調子いいねぇいい事あった?」なんて聞かれるので「家にいる猫を躾けてるのが楽しいみたいです」と言えば猫飼ってるの!とか言われて
「猫みたいな感じです」と言えば「彼女かー?やるねぇ」なんてからかわれる、皆大人なので深くは探っては来ない、そんな環境には救われている
そして運命の期末テスト!俺は例年通り90点代のテスト用紙に満足している順位も10位以内、仕事をしながらならこんな物だろう
3年の掲示板が何やら騒がしいなと思いながら史子の名前を探してみる、上位50位以内の張り出される掲示板を下から名前を探すがなかなか見つからない、まさか1位なんて無理だろうし50位以内なら少し制限を緩くしてやろうかとも思っていたがやはり勉強も見てやらなければいけないかと思い1位を見ると【佐藤史子】の文字
「は?」
よくよく周りの声を聞いてみると「佐藤さん頭良かったのね」だの「カンニング?」だの「今まで30位くらいに居なかったっけ?」だのだの
「佐藤さん!凄いね、塾とか始めたの?」という声にそちらを向くと史子が掲示板を見ている、そしてそのままキョロキョロと辺りを見渡し目が合うとニィっと笑う
「ねぇ佐藤さん!」と言う声に「最近授業中も起きているし教科書読み込んでたからかな?」という言葉に「そういや最近寝てないねぇ」とはしゃぐ女生徒にタジタジと引きつった笑いを見せながら「じゃあ私行くね」と根暗そうな男の方に走って行きなんだか楽しそうにしているのだった。
俺は放課後テレビ局に行ってバラエティーの撮影をして家に帰る、食事をとっているとダダダと走ってくる音
「良輝!お前の負けだ!」
「なんの漫画だよ」
勝ち誇った顔で仁王立ちをして立っている、まぁ1時までを許したのは俺であるが本当に授業だけで家で勉強している姿を見たことが無い、自分が仕事でいない時間が多いとはいえ、寝る時間以外部屋に入らないとはいえ、騒ぐ声で何となく勉強していないのは察せる、ならばやはり納得できない
「カンニング?」
「そんなチート使わんわ!私はチートは使わないの!それに」
史子が紙を並べるそれはテスト用紙、現国以外オール100、現国は作者の気持ちという点で少し点を引かれているくらいほぼ100と言っていいだろう
「これで文句ないでしょ!」
納得できない、教科書読むだけで、授業聞いているだけで、オール100
テスト用紙から史子に視線を戻せば満足気の顔が可愛い、どうして瓶底眼鏡なんだとそこも怒りたくなる気分だ、
「わかったよ、1時までならゲームしていい」
「朝まで」「1時まで!」
「ちっ」
あからさまに舌打ちをする史子はテスト用紙を回収して部屋に帰っていった。
天才肌というやつか、とても悔しいが仕方ない、約束だ、それにしても、スタイルもいいし顔もいい頭もいいなら人気になりそうだが・・・その性格と生活力を考えると難しいのかと思い至り、なら今の根暗グループにいてくれたほうがいいなという結論に至るのだった。
「あいつが可愛いのなんか俺が知っていればいいし」
と・・・口にしてなんだこのラブストーリーみたいなセリフと思い変な考えを振り払って食事をとるのだった。
約束通り、1時に部屋に行くとコントローラーを握ったまま眠っている史子、もしかして寝落ちたのか?と思いゲーム画面を覗けばホーム画面のようだ。
「ふ・・・姉さん、おーい、・・・・・寝てるな」
何となく史子のヘッドセットを取ってはめてみる
「やっぱ寝ていたか」
「弟君いい声ー」
「やっぱり良輝に似てるよねー」
これは参加はしないほうがいいんだよな、なんだか感づいている人も居るみたいだしコメントだけ残すかと、チャット欄に【姉さん寝たみたいなので落としますね】と打つとチャットが返ってくる
【弟君ありがとう!】【りょ】【弟君が代わりでもいいよ♡】
なんて書いているので【もう寝なきゃいけないのでごめんなさい】と打つと
【なら仕方ないねぇ】というチャットに【では失礼します】と打って通話を落とし、ゲームも消す、そして史子をベッドに寝かせる。
ちょっと顔をしかめていたのが満足気に気持ちよさそうに寝ている、化粧品会社の社員である母さんが「娘とお風呂って夢だったのぉ」なんて言ってヘアケアからスキンケアまでして、史子に好きな話をさせて楽しそうに聞きながらメンテナンスしまくるものだから一緒に住みだした頃より磨きがかかって美人になっている。
流石母さんだなぁと思いながら見る史子は、寝ている姿は深窓のお姫様だと言われても信じてしまう、まぁほぼ引きこもりだから遜色ないのか?いや性格が姫じゃないなと思い直す、姫のように美しい史子を眺める、いつもいやそうな顔しか見ないが、笑顔も見てみたいものだなと思いながら部屋から出ていくのだった。
次の日の早朝、となりの部屋の大きな声に驚いて起きる
「どうした史子」
部屋を開けて聞けばベットで頭を抱える史子
「寝落ちなんて初めてした。こんな失敗するなんて健康的な生活のせいだぁああ!!」
「いいじゃん健康になるんだから」
笑って言えば「よくない!」と怒鳴る史子、慌ててパソコンを起動させて昨日通話していたグループを確認したようだ
「なんでチャットしてんのさ!」
「しゃべるわけにはいかないからな」
「だからってさ!」
「無言で出ていくのも失礼だろ」
「もう!学生社会人!」
なんだその言葉と思っていれば、チャットで何か会話しているようだ、慌てる史子が可愛くてなんだかイタズラを成功させた子供のように楽しくなる
「もう!何してんの!着替えるから出て行って!」
「下着を片付けられるのは平気なのにな」
「いーから出てけえええええ!!!」
「はいはい」と言って俺は部屋を出て行った。
登校時間には早い時間に軽い朝食を4人分作っていたら母さんが来てそのまま一緒に料理をする。しばらくすると誠治さんも起きてきて「真絵さん良輝君おはよー」とポヤポヤ起挨拶して来て椅子に座り新聞を広げている。料理もできたので史子を迎えに行く、史子はまだチャットで何か会話しているようだ、
「史子、朝食できた」
「良輝ナイス」
初めてナイスなんて言われたなと思いながら見ているとチャットを終わらせ不機嫌にこっちに来る
「もうあんたこの部屋でしゃべんないで、みんながしつこいんだから」
なるほど、俺のことでいろいろ聞かれたのか、ならそれこそ
「適当に呼ばれてなくても呼ばれたって言ってダイニングに来ればよかったんじゃないか?」
「嘘はつきたくない」
そりゃ真っ直ぐな人で、と思いながら史子の後について行くのだった。
朝食もとり、それぞれで出勤登校の準備をして揃って家を出るが史子は速足で俺から離れていく、俺は追いついてしまわないようにゆっくり歩いてやるが目には入る距離を保って歩く、
学校につくと俺は周りに人が集まってくる。チラッと史子を見れば何時もの男子と並んでいる。そして見える史子の笑顔の横顔、あんな顔もできるのか、その顔が違う男に向けられると思うと少し胸がざわざわとする、チラッと男がこっちを見た後に、史子がこっちを見て害虫でも見る目をする、この目は俺だけに向けられる、と少し面白くなって笑い返してやればさっと目をそらされる
「良輝どうしたの?ボーとして」
取り巻きの女が胸を押し付けながら腕に絡みついてくる、気持ち悪いと思いながらも笑顔を返す
「早起きしすぎちゃってね、ちょっとまだ頭が寝てるみたいだ」
そう言えば「じゃあ膝かしてあげようかぁ?」なんて言ってくる女子に「魅力的な提案だけど授業を受けたくなくなっちゃうからやめとくよ」と言って断ればキャーと騒ぐ女子たち、あー今日も騒がしいなぁと、面倒な学校生活を思うと楽しそうな史子を羨むように見るのだった。
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