5 エミリオ

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注文を終えて食事を待つ間、居心地が悪くて窓の外を眺めていた。 別に何も悪いことをしていないのに、なんだか落ち着かない。 通り過ぎる人達を見ていると、自分のことを考えずにすむ。 これから帰るのかな、誰か待っているのかな、とか、一人空想の世界へと入っていた。 そんな私を、じっとエミリオが見つめていたことも気づかないくらいに。 食事が運ばれてくると、食欲はないと思っていたのに、一口食べると美味しくて、結局完食してしまった。落ち込んでいる時でも、食事が喉を通るのが不思議だ。 「どう? 少しは、元気なった?」 エミリオは、私を元気づけようと明るく声をかけてくれる。食事中も、他愛もない話題を提供してくれた。 エミリオは優しい。 それはまるで、私に好意があるのではないか、と勘違いするほどに。 私の曖昧な態度も、エミリオへ勘違いさせてしまうものなのかもしれない。 「エミリオ、あの……、もしも、 勘違いだったらごめんなさい。 こんな事言うなんて、私なんかが自惚れた発言するようで、心苦しいんだけど……。 私ね、好きな人がいるの。 その人とは付き合ってたんだけど……。 だから、もう、こんな風に2人で食事したりすることは遠慮したいの。 あの、エミリオがそんなつもりで誘ってくれたなんて、思っているわけじゃないんだけど!
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