6 隣街へ

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特に何をするでもなく、ただ一緒に歩いたり、買い物をしたり、その日のことを話したりするだけなのだけれど、私にとっては唯一の心の救いとなっていた。 友人にお土産を買うのは、別に普通のことだよね。 私は、誰に許しを求めているのか分からないけれど、言い訳を自分に言い聞かせて、お店を見て回った。 ふと、出店の一つに、便箋や万年筆が並んでいるのが目に留まる。 そうだわ、エミリオは書類仕事も多いと言っていたわ。 お世話になっているし、ちょっと奮発してこの万年筆をプレゼントしよう。 万年筆には、イニシャルが刻んであった。私はエミリオのE の文字が刻んである万年筆を購入した。エミリオは、喜んでくれるかな。 自分にも可愛い花柄の便箋を。 父へは、限定の紅茶を。 いつも父は隣国の紅茶をお土産に買ってきてくれていたから。 せっかくのお土産なのに、紅茶は苦手だと子供ながらに文句を言っていたけれど。いつのまにかその紅茶が好きになっていた。 成長と共に、好みが変わるのも不思議なものね。
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