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7 婚約
帰りの馬車の中での記憶はない。
ずっと眠っていたから。
というのも、昨日ベッドに入ったものの眠れなくて、結局朝まで一睡も出来なかったからだ。
何も聞きたくなかったので、都合が良かった。アーノルドさんも二日酔いで寝ていたようだし、ルーカスとサラお嬢様は、きっと2人で話していたのだと思う。
そんな二人の会話を、聞くことにならなくて良かった。
「お疲れ様でしたー!サラお嬢様、若旦那様おかえりなさいませ。」
「アーノルドさん、リナ、おかえり」
交渉の結果を知りたくて、皆が今か今かと私達の帰りを待ち構えていた。
出迎え時に、私の名前も呼ばれたことにほっとする。
全員が私を拒絶しているわけではないんだ。
「只今戻りました。交渉の結果ですが、サラ、君の口からよろしく」
「皆さんの応援のおかげもあり、無事に出店の許可がとれました!」
「おめでとうございます!」
皆が一斉に歓声を上げる。旦那様はとても喜んでルーカスの背中を叩く。
旦那様はあんなにはしゃぐ方だったかしら?
「よくやった!皆も聞いての通りだ。
出店も決まり、幸先明るい!
もう一つめでたいことがある!
ルーカス、サラお嬢様、2人共前へ出てきてくれるかな」
従業員達は、一斉に2人に注目した。
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