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ルーカスが、とても幸せそうな顔をしていると思うから。
そんな顔を見たら、
今度こそ私は、立ち直れない。
ここにはいたくない
私は、夢中で商会を飛び出した。
婚約ですって、
ルーカスがお嬢様と……。
いつからそういう関係だったの?
そんな当たり前のこと、私が一番分かってることじゃない。
認めたくないよ、ルーカス。
なんで…
気がつくと私は、河原に座り込んでいた。川に映る自分の顔をひたすら眺める。
水面に映る自分の顔が、波うってボヤけいていく。石を投げ込んで、その顔を見えなくする。波紋が収まるとまた顔が浮かんでくる。そんな意味もない行動を、ただただ繰り返していた。
ほんの小さな波紋で崩れていく自分の顔。
私なんて、結局この程度の存在なのね……。
これからどんな顔をして、仕事に行けばいいんだろう。
もう行きたくない……。
どうすれば━━。
「リナ?」
「っ!」
まさか、こんな偶然があるの?
「━━エミリオ」
そこには、私を心配そうに覗き込むエミリオが立っていた。
そう、こんな風に、帰り道にエミリオと会うことがある。
「リナ、大丈夫? 顔色が悪いよ。歩ける?」
私は黙って頷くことしかできなかった。
エミリオは私を立ちあがらせてくれて、そのまま手を繋いで歩き出した。
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