番外編 バレンタインの思い出

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番外編 バレンタインの思い出

あれは学園でのこと。 ルーカスの背丈は私より頭一つ分は高くなっていた。背丈のことでからかうことは出来なくなっていた。 今日は廊下や教室でも女子が固まって密談をしている所をよく見かける。 ルーカスと共に教室に入ると、それぞれ自分の席に着いた。 授業の用意をしようと、鞄から荷物を出している時も周囲が気になって仕方がない。 私は斜め前の席のメグの背中をつつく。 『メグ、メグ、ねぇ、今日なんかあったの?』 メグは私の声で振り返ると、一緒に話していたローラと顔を見合わせる。 「おはようリナ」 「リナ…まさか今日が何の日か知らないの?」 2人は信じられないといった顔つきで不思議そうに私を見つめる。 『え?』 2人はもう一度顔を見合わせるとため息をつき、ローラは私の隣へと座った。3人で輪になり、こそこそと話し始めたのはメグだった。 (あぁ、メグとローラとは学園の時によくこうして話していたわね。卒業してからは仕事に忙しくて、疎遠になってしまった。2人とも元気にしてるかな) 「もう、リナ、今日はバレンタインでしょ!」 「リナは贈る相手がルーカスと決まっているからね~」 2人はクスクスと笑う。 『へ?あ~そっか、それでなのね。どうりでそわそわした雰囲気だと思った。でも私は誰にも贈らないわよ』 「は?」 「なんで?」 2人は同時に詰め寄ってきた。 そう、バレンタイン。年に一度のこの日は女の子が好きな男の子に手作りの贈り物をする日。 主にクッキーを渡すことが多くて、手芸が得意な方はハンカチに刺繍をして渡したりもする。 ハンカチは学園で使われると、刺繍の出来栄えが他の子に見られるから腕に自信のある人しかしない。 逆に言うと自信のある人はハンカチを渡して、敢えて使ってもらい、ライバルを牽制するのだ。 そう、ハンカチを使うということは交際を承諾したという証。クッキーなどお菓子は食べたらなくなってしまうので、何人にも配る子もいる。 私は、そういうの苦手だし、そもそもクラスの男子とは必要以外話したことない。 「なんでって、別に私とルーカスはただの幼馴染みだし。贈りたい相手もいないから」 私は笑って答える
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