どうして?

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どうして?

 授業のチャイムが鳴って十分を過ぎた頃、和泉の姿を第二校舎裏の自販機の横で見つけた。どこか遠くを見ている和泉の片手に、薄味の梨ジュースの紙パックが握られている。 「サボりなんてイズミンらしくないじゃん」  あたしが近づくと、和泉がはっとしたようにこちらを見た。だが、すぐに「姫宮さんか」とほっとした表情になる。あたしはその手の中の紙パックを指さした。 「授業をサボってまずいジュースを飲むって、意味不明だし」  和泉がははっと小さな笑いを漏らす。 「姫宮さんがくれた画像を眺めてどれにしようか悩んだんだけど、これの印象が強くて」 「それ、まずいっていう印象じゃん」  だが和泉は笑ってジュースを飲み干し、自販機横のゴミ箱に紙パックを落とした。校舎の壁に背をつけ、植え込みと校舎の間の狭い空を見上げる。それを目で追ったが、今にも泣き出しそうな灰色の雲が広がっているだけだ。  じめじめした空気にため息をつき、腰に巻いていたキャメル色のカーディガンをきゅっと引き結び直す。隣に立って同じようにコンクリートの壁にもたれ、口火を切った。 「イズミン、なんかおかしくない? ウチには彼氏いないけど、彼氏にチューされてなる顔じゃないと思う」  すると和泉はすぐに俯いた。その下を向いた顔を更に下から覗き込む。そして無表情の和泉にたたみかけた。 「イズミン、どうして碓氷と付き合ってんの」
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