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 甘く低く名前を呼ばれ、肌が粟立った。ひ、と息を吸い込む。衝撃のような快感が弾けた。濡れた感触を腹に感じ、さらに身体がびくびくと引き攣る。  少し遅れて、壱弥も掠れた声で呻いて、二人の腹をもっと濡らした。  呼吸も鼓動も乱れたまま、深いキスを何度も繰り返す。ようやく唇を離すと、壱弥のそれは再び熱を持っていた。 「……ご、ごめん、俺また……」  響を自分の上からおろして、恥ずかしそうに壱弥が腰を引く。 「……壱弥は、……この先も、したい?」  尋ねると、壱弥の表情が欲望の色に煌めいた。壱弥も、この先――触り合いだけではなく、行為の最後までを望んでいると分かる。 「……し、したい。……響が、嫌じゃなければ……」 「……嫌じゃないよ」 「……ほんと?」  うん、と頷く響の腕を、壱弥が遠慮がちに触る。火傷しそうに熱い体温が、響にも伝染する。  今までの行為も、この先も、全てが初めてで不安はあるけれど、相手が壱弥なら大丈夫だと思える。響自身も、もっと壱弥に触れたいし、近づきたい。  覚悟を決めた瞬間、響はあることに気づいた。 「あ」  壱弥を寝室に誘おうと開いた口は、しまったというニュアンスの混じる声を発する。 「……どうしたの?」 「……あ、……えっと、……ごめん。俺、その、……必要なもの、何も持ってなかった」  自分の“決まらなさ”に項垂れる。  まさか今日、壱弥とこんな事態になるとは予想していなかったから、行為に必要な道具をなにも準備していない。  ――これだから童貞処女は。  英司の言葉が、呆れ顔付きの映像で再生され、友人に対して理不尽な怒りが沸く。 「……俺、持ってる」 「……え?」 「……ちょっと、待ってて」  壱弥がソファから身を乗り出し、床に置かれた自分のリュックを取った。その中からビニール袋を出し、中身をローテーブルに並べる。ローションのボトルと、コンドームの箱。どちらも新品未開封。 「……なんで?」  響が問うと、壱弥がそわそわと身体を揺らす。 「さっき、買い物中に英司さんからメッセージがきて、……買っとけって言われた」  ――あいつ……。  響は複雑な気持ちで眉を顰める。なんだか英司の思い通りに動かされてる気がするけれど、一応、感謝するべきなのか……? 「……ゴムは、これ……やけに種類豊富だな」  カラフルな箱は、機能やサイズ違いで四つも用意されている。 「俺、こういうの買うの初めてで……自分のサイズもよく分かんなかったから……ネットの情報を参考に、……これくらいかなって……」  緩く元気なままの壱弥のそれに、ちらりと視線を向ける。
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