14

7/7
前へ
/90ページ
次へ
「い、ちや……気持ち、い」 「俺も……良すぎて、やばい……」  頰を上気させ、壱弥が快感に眉を寄せた。首元に浮かぶ筋と汗が、やけに情欲的に見えて息が上がる。  蕩けるような息苦しさに、壱弥を引き寄せキスをねだった。壱弥の潤んだ目が艶やかに細められ、さらに胸が苦しくなる。唇を塞がれて、もっと苦しい。それでももっと、壱弥と深く繋がりたい。  思わず腰を揺らすと、応えるみたいにいいところを執拗に突かれた。響自身にも手を伸ばされ、限界があっという間にやってくる。 「あっ、ああ!だめ、壱弥、もう……っ」 「いいよ、……響、見せて」  壱弥の鈍い光を帯びた瞳が、響を映している。  ――一回見たものは、めちゃくちゃしっかり、全部覚えてる。  壱弥の言葉を思い出して、快感が弾けた。チカチカと視界がぶれる。中がうごめくように収縮し、壱弥を締め付けた。  響の腰を掴む壱弥の手の力が強くなる。 「あっ、ま、待って、ああっ」 「ごめん、止まれ、ない」  いったばかりの敏感な中を容赦なく突かれ、ひたすらに喘ぐしか出来ないでいると、壱弥が一際強く腰を打ち付けた。響の中で、熱い塊がその欲を解放した。  荒く息を吐き、壱弥が倒れ込んでくる。耳奥で聞こえる心臓の音は、どちらのものか分からない。  腰が、足が、心が、痺れて震える。  悲しくないのに涙が溢れた。響に抱きつく壱弥の目元も、お揃いに濡れている。  目尻にキスをすると、壱弥が幸せそうに微笑む。同じ場所にキスが返ってきて、響も壱弥みたいに笑った。  汗でしっとりした肌が触れ合って、呼吸も鼓動も一つに重なっている。 「次のヒートの時は、俺の首、噛んで」  言葉がするりとこぼれた。理性もコンプラも届かない、響の心の底から。  こぼれたそれは、壱弥がしっかりと瞳で飲み込んで、暖かい涙にしてまたこぼす。 「……俺で、いいの?」 「……お前がいいの」  壱弥が震える吐息を漏らす。  響のカラーに口付けて、涙の滲む声で、「愛してる」と祈るように囁いた。  響も、壱弥の額にキスをする。涙と愛の言葉が、勝手にまた、するりするりとこぼれ続けた。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

357人が本棚に入れています
本棚に追加