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再会
「モモ!」
僕がその名を呼ぶと、モモはまっしぐらに駆けてきて、僕に抱きついてきた。
「モモ、本当にモモなのか?」
僕は信じられない気持ちで、モモの顔を両手ではさみ、その目を覗いた。
僕の声にピンと耳を立てて、ちょっと上目遣いにこちらを見る表情。背中を触ると、尻尾をクイッと左に曲げた。いつものモモの癖。
確かにモモだ。そう分かったとたん、目に涙がこみ上げてきた。
「モモ……ごめん、ごめんな。最期に会いに行けなくて……」
泣きながらそう言ったが、モモは首をかしげて、僕の手をペロペロ舐めるだけだった。
「本当は行きたかったんだ。なのに……いや、言い訳にもならはないな。僕はずっとそのことが気にかかってて……うわっ。こらモモ! 押し倒すなよ! 今大事な話をしているんだぞ!」
口ではそう言ったが、僕はもう笑っていた。モモが相変わらず嬉しそうな顔で、僕の顔を舐めまわすからだ。
天使がそんな僕らを見て、微笑んでいる。羽がふわりと動いていた。
「モモちゃんは幸せですね」
「え……?」
「だってそうでしょう。こんなに愛されて。モモちゃんは、あなたに裏切られたなんて、思っていませんよ」
「そうでしょうか……」
僕はモモから身体を離して、あらためてモモの顔を見た。モモはキョトンとしている。その顔を見て、
(ああ、そうなんだ……)
と、僕は納得した。
天使の言う通りだ。モモは、僕に裏切られたなんて、少しも思っていない
モモは純粋に僕のことが好きなんだ。そう分かったとたん、今までの苦しかった気持ちがスウッと溶けていった。僕は思わずモモを勢いよく抱きしめた。
モモは少し苦しがってジタバタした。
「あはは、ごめんごめん。……よし、散歩するか!」
僕が立ち上がると、モモも勢いよく立ち上がり、「ワン!」と吠えた。
僕たちは虹の雲海を歩いたり走ったりして廻った。昔のようにリードは付けていないが、モモはちゃんと僕についてきた。
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