ベランダの天使

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ベランダの天使

「あのう、すみません。私、天使なんですが」  思わず顔を上げると、そこには、流れ星と同じ色をした羽根を背中に背負った天使──としか言いようのない男、いや女……?── が立っていたのだ。 「ど、泥棒!」  思わずそう叫んでしまったのも、仕方ないだろう。  自分の部屋に、天使が来るだなんて、誰が思うだろうか? 「いえ、天使なのですが……」 「そんなわけないでしょ! 警察呼びますよ!」 「お、落ち着いて……」  天使は慌てて、僕の手を掴んだ。その足は床に着いていない。羽根をひろげて飛んできたのだ。僕は息をのんだ。少なくとも人間ではない、と理解した。 「怪しいものではありません。私、ただの天使です。大事なカケラを落としてしまって。お騒がせしました」  ただの天使って、なんだよ。天使自体、ただ者じゃないだろう?  「拾ってくださって、ありがとうございます。悪い人に拾われなくてよかった」 「あ、ああ……。でも、これって一体なんなんですか? どうしてこの部屋に落ちてきたんですか?」 「説明したいのですが、始末書を書かなきゃいけなくて……」  天使の世界にも始末書ってあるのか。人間界と同じなんだな、と僕は思う。まさに今日、始末書を書いてきたばかりの僕は、この天使に少しばかり親近感を覚えた。
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