落ちこぼれ同士

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落ちこぼれ同士

「はい。実は私、カケラを落としたのが、これで3回目なんです。その上、お礼もできないでは、左遷されてもおかしくありません」 「それは……大変ですね」  落ちこぼれ社員の僕としては、そう言われては共感するほかない。天使の業界も大変なのだ。せめて何かしてあげたい。 ……いやまて。天使に同情するってどういうことだ。 「私を助けると思って、何か願い事をしてください」 「えっと、それなら窓ガラスの修理では駄目なんですか?」 「あまり願い事が小さすぎても、処分の理由になってしまうんです。天界には、期限を延ばすように頼みますから……ね、お願いします」 「は、はい」  天使の切羽詰まった顔を見て、思わず頷いてしまった。僕から色々頼みごとをされている青井先輩も、こんな気分なのだろうか。 「では、また来ます。願い事、考えておいてくださいね!」  そう言うと、天使はスウッと霧のように消えてしまった。この退場には、いまだに慣れない。 「どうしよう……でも、降格は気の毒だし」  珈琲カップはいつの間にか空になっている。しっかり飲んでいったのかと思うと、妙におかしい。 「モモ、どうしようか?」  勿論、返事はない。  そういえば、僕はどうして友達にも話していないモモのことを、天使には話したのだろうか。  彼(彼女?)は人間ではないから、かえって話しやすかったのかもしれない。  ソファの上には、天使が読んでいた漫画雑誌が広げられたまま。人間臭いその仕草を思い出して、僕は思わずクスッと笑った。
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