煌Side

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久々に鳴らすインターホン。 ドアが開くと結月は驚いたような顔を見せた。 それもそうか俺がいるなんて一言も言ってないんだから。 紫月さんが受け取るはずだったファイルを代わりに受け取ると、結月は不思議そうに俺を見つめる。 それもそのはず。 だって用はもう終わったのだから。 それでも、もう少し結月と会話がしたくてもう一ヶ月も前に報道されたハチの話をする。 しかし、それも不発に終わり沈黙が流れる。 「あのさ、」 何でもいいから話かけろ。 そう思い、口を開いた時、 「ゆづ」 リビングから顔を覗かせたのは橘さんだった。 「あ、碧人くん」 なんとなく、あの人の好意には気づいていた。 紫月さんがいない日でも結月に会いに来るんだな。 ていうか、もう付き合ってたりして。 そんなことを考えながら2人に会釈をしてエレベーターに乗る。 ……俺が嫉妬するのは違う。 そう思うにあの日の答えを俺は後悔し始めていた。 そして、数日後握手会の日がやってきた。 結月も今日この会場に来ているのだろうか。 数日前、ゆづのアカウントを見に行くと俺のニュースに対する投稿があった。 たった一言で結月はこんなにも簡単に俺の気持ちを救うんだ。 「好きです」 「ありがとう」 「プロポーズして下さい」 「今日からお前俺のもんな」 握手をしながら時々、ファンのリクエストに答える。 それを数十回繰り返した頃だろうか。 突然、結月が目の前に現れた。 一瞬、動揺したのをスタッフ悟られないように「こんにちは」と声をかける。 あの雷の日以来、触れることのなかった結月の手。
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