推しと恋は別ものらしい

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「えっなっ何、誰?」 「しっ!大声出すな」 その“誰か”を押し込んだお兄ちゃんは慌てた様子で鍵を締める。 何が起きたのかよくわからない私と「はぁー」とため息をつきしゃがみ込むお兄ちゃん。   押し込まれるような形で家に入ってきた人物は「いてーよ」そう言うと深く被っていた帽子を脱ぎさっと髪を整えた。 私より20センチほど高い背。 それに揺れる艷やかな黒髪からチラリと見える切れ長の目。 マスクで鼻や口元は見えないが溢れんばかりのキラキラとしたオーラ。 …………私は彼を知っている。 なぜなら彼はさっきまで夢中になってかじりついていたテレビ画面の中にいた人物だから……。 そう、私が愛してやまないBijouのハチ! …………ではなく、 「どーも。一色です」 そう。Bijouのセンター、一色煌がなぜかうちの玄関に立っている。 い、一色煌!?……のそっくりさんじゃなくて? でも、私が推しグループを見間違えるはずがない。 それにほんの数秒前、目の前の彼は自分で一色ですそう名乗ったのだ。 ……ということは、つまり……。 目の前にいるのは本当にあのBijouのセンター、一色煌!? 「ゆづ!ぼけーっとしてないで煌をリビングに」 フリーズ状態の私にお兄ちゃんが再び声をかける。 「あ、えっといらっしゃいませ??こちらがリビングでございます??」 とんちんかんな言葉を並べ歩き出すと後ろから煌がついて来る。 な、何これ。 今どういう状況!? え?私、知らないうちに死んでて異世界にでも転生した? 転生したらアイドルの妹でした?的な? 頭の中も完全にパニック状態のままリビングへと足を踏み入れる。
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