深夜、走る箱のなかで

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 中学一年生。生まれて初めて、夜行バスの予約をとった。  WILLER EXPRESSというバスらしい。  二〇時五五分発で、七時三〇分に到着する予定。  平日に席をとったので、価格は安く、四四〇〇円だ。  ここまで予約するのに、少なくとも一時間はスマホとにらめっこしていた。  操作が煩雑だったわけではないのだが、どの移動方法が一番安いのか比較していたからだ。  時間がかかったわりに、結局、夜行バスに落ち着いた。バスの中ではもっと安い便もあったが、最安値は夜行用に設計されたものではなく、ごく普通のバスで寝るものだった。  初めての一人旅で疲れ切るだろうから、寝心地が少しよさそうなバスを選んだ。僕のお小遣い事情も考えないといけないが、そこくらいはちょっぴり贅沢にいこう。  ついこの間まで小学生だった僕は、どんな公共交通機関もほぼ使ったことがない。調べに調べても、現地の案内所などできかないといけないだろう。  うまくきけるだろうか。言われた通りに動けるだろうか。 「ほな、ディズニー行ってくるわ」  母親にはそう言って、小遣いを五万ほどもらった。  外出理由を適当につけるための、嘘だった。  これから始まる内緒の一人旅に、僕は不安と期待に満ちていた。
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