深夜、走る箱のなかで

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 降りた場所で朝食をとれるところがないかと、現在地周辺のレストランや喫茶店を検索してみるが、こんな早朝に開いている店はない。  やっと見つけたのはファストフード店で、朝メニューの中から卵のマフィンを頼んだ。  食べる前に、一人旅の記録をしておくか。  マフィンの写真を撮るために、スマホを取り出そうとポケットを探ると、何やら、一枚の紙があった。  おじさんの連絡先だ。  思い出して、僕は急いでマフィンで汚れた手をナプキンで拭うと、恐る恐る、その紙を開けた。  そこには、メールアドレスや電話番号のほか、住所までもあった。帰宅のためにバスに乗っていただけはあって、ここから近い。  最後に、昔からよく聞いていた男性の名前が書かれていたのをみた僕は、思わず机に紙を落としてしまった。 『やっとみつけた。』  拾い上げた紙に書かれた、震えるその字の主に、僕はこれから会いに行く。
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