深夜、走る箱のなかで

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 アラームが鳴った。  周りに迷惑かと慌てて起きて、アラームを切ってから気づいたが、イヤホンからなるようにしていたのだった。  ほっとすると、朝の倦怠感が全身を襲う。もう一度寝たいが、降りれなくなってしまう。僕はイヤホンを耳から外した。  最前列のカノピーはもう閉じられているのがみえた。おじさんのほうが先に起きたようだ。  次にバスが停まるのは、僕が降りるバス停のようだ。降りる準備をする。  秋から冬へと移ろおうとする空はまだ白み、明けたばかりだ。夜行バスの朝は、眠たいようで、だるいような空気が漂っている。他の人たちも数人、まだ眠っている人の邪魔をしないように、静かにカバンを棚から下ろしていた。  バスが完全に停車して、静かな声でアナウンスが流れる。  僕は通路に出ると、最前列まで行き、一-D席をみた。  そこはもう、空っぽだった。  そのままバスを降りると、運転手が僕の荷物を出してくれた。隣にあったはずのおじさんの荷物はもうない。  先に違うバス停で降りてしまったのか。
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