深夜、走る箱のなかで

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 バス停に行く前に食事を済ませようと、生姜焼き弁当を買ってきた。  いつも母親が決めたメニューを食べるのとは違い、自分の気分で食べるものを決められるのもいいものだ。  僕はいつもよりおいしく平らげた。安心感があるのはやはり家庭料理だが、たまにはこういうものもいい。  駅にはバス停がたくさんあり、どこで待てばいいのかわからなかったので、案内所へ行ってきいた。  教えられた通りに向かおうとするが、教えられたところがどこなのか把握するのも一苦労だ。  何とか目的地までたどり着き、僕は、バス停の椅子に腰かけた。あちこち歩き回ったので、座ったとたん、足に重い疲労感がのしかかり、もう動きたくなくなった。ずっと座っていたい。  椅子にずぶずぶと身体が吸い込まれるようだ。僕はそのまま、うとうとと微睡んでいってしまった。
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