深夜、走る箱のなかで

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 トイレ休憩に、バスがサービスエリアに寄ると、僕はいち早く立ち上がり、他の人が降りようとする前にバスを降りた。  駐車場からサービスエリアへ走っていき、トイレのマークを確認する。  幸い、トイレはライトで照らされていてわかりやすく、すぐに個室に入った。  トイレに入ると、安心感から、少しずつ落ち着いていった。ひっくり返りそうだった胃の中が、静かになっていく。  ついでに用を済ませ、時間を確認するが、もうしばらくギリギリまで外にいたかった。不安定な密室のバスに戻りたくはない。  トイレから出ると自動販売機が目に入った。ほっとレモンがあったので、ポケットから小銭入れを出そうとして、しまったと気づいた。  気持ち悪さで急いでいて、貴重品までバスに忘れてきてしまった。
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