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#01.Happy unhappy drags
イカれたメンバーを紹介するぜ、なんて仲間をイカれている扱いするのもどうかと思うがまあ、これまでの経験からすれば、イカれていることは確かだった。
思えばオレたち三人は中学からの付き合いだった。右も左もわからないままになんとなくで始めた音楽だったが、あいつは才能に恵まれ、こいつは努力を惜しまなかった。オレは……なんだろうな、運が良かったんだろう。運も実力のうちだって? いやいや、まさかな。
あいつ――今野人清は物が違った。紙一重で天才と言っていい。紙一重で、だ。そもそも、弦の本数の違いもわからないままに、ギターのつもりでベースを買った人清は高い買い物にも関わらず、店員と話すのがだるかったというだけで入店から退店まで十五分で終えていた。
これにはこいつ――當原衞も呆れていた。オレがギター、人清がベースを手にしたのを知った衞はドラムを始めると言った。オレたちのことは気にせず、やりたいものをやればいいというオレに対し衞は、自分は後ろにいるくらいがちょうどいいんだ、と妙に達観した様子で応えていた。
衞はこのときからすでにステージを見据えていたんだ。中学で背丈が伸び切る前であっても、衞の身長はオレたちを超えていた。
ドラムの練習がいかに大変かをオレたちは実感することができない。せいぜい推し量った気になってみて、やっぱり衞には尊敬の念を禁じ得ない。
その細腕でStrange bad tripの屋台骨を支えているのが當原衞という男だった。
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