#01.Happy unhappy drags

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 オレたちは学業はおろそかにしてナンボという価値観でやってきた。アリとキリギリスでいうキリギリスマインド上等だったのだ。  なあなあで行った就活の結果、内定こそ得たもののまったく気が進まない。働く気なんかこれっぱかしもなかった。  やはり音楽がいい。  いうても誰か拾ってくれるやろ、とライブハウスというダンボールのなかでぎゃあぎゃあ鳴いていたにも関わらず、けっきょく拾ってくれる者は現れぬまま年明けが迫っている。  天狗になっていたのかもしれない。  ちょっと待ってくれと言い訳をしたい。うちの高校はプロのスカウトが直接、足を運んでくれたことがあるんだ。プロデューサーだかコンポーザーだかいう、なんちゃらあまひこだかあまひとだかが来たのだ! 拾われないのはこの音楽関係者に対する意識の低さのせいかもしれない。  もっともそのあまひこさんはスカウトに行った久遠くくる女史にセクハラかまして帰ったらしい。ふてぇ野郎だ。  軽音部男子勢には目もくれなかった。オレはともかく、人清も実力だけならプロでも通用しそうだと感じるのは身内かわいさもあるのだろうか。  ともあれ、三人仲良しこよし、褒め合ったところでなにも変わらない。双肩に載る『将来』の二文字が重みをじわじわと増やしていく。――いや、見て見ぬふりを決め込んでいただけだ。  来るとわかっているものを見ないふりしたところで始まらない。ここらで一発、名曲を仕上げてトントン拍子でメジャーデビュー、人生バラ色、左うちわと行こうじゃねえか。 
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