1st part

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船橋駅9時発、運動公園行のバスは 他校のジャージを着た同世代の男女で 混み合っていた。 バス停に着き、最後にバスを降りると 競技場を目指して歩き始めた。 彼とはまだ連絡先を交換していない。 誘われたとはいえ、 試合直前に彼に気を遣わせたくなかった。 競技場の入口には年配の係員が2人いた。 スタンド席に上がるとトラックが一望でき、 走り高跳びはトラックの中の一角で 行われると聞いた。 「結構、遠いなあ」 スタンド席の1列目。 やや右寄りの席を確保した僕は、 予想よりも遥か彼方に見える走り高跳びの マットと支柱、バーを眺めた。 その時、スタンドの真下からユニフォームを 着た選手が次々と現れた。 どうやら開会式が行われるようだ。 あらかじめ用意された台の上に、 恰幅のいい男性が立った。 「これより選考会を開催します。 上位入賞者は県大会出場が決まる、 いつもにも増した大切な試合です。 選手の皆さん、怪我のないように 細心の注意を払って頑張ってください」 まばらな拍手の後、女性のアナウンスが 流れた。 「選手宣誓。選手代表は、前回大会での 走り高跳びの優勝者、県立○○高校 川瀬由貴さん」 えっと思い、僕は身を乗り出した。
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