A moonless night🌙

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 濡れた石畳に靴音が響く。ハイヒールほど高音じゃなく、革靴ほど重たくない。私の真っ赤なエナメルの靴は、タップダンスみたいに軽やかな音楽を奏でてる。  黄色い街灯の灯りの中に、濡れないくらいの霧雨が降っているのが見える。手に持った黒いレースの傘をくるりと回すと、ミニ丈の黒いドレスの裾もふんわりふくらむ。  太陽の光なんて大嫌い。日焼けするだけよ。誰もいない夜の街はとっても気持ちがいい。  スキップしてターンしたら、コウモリがやってきた。ヒラヒラと宙を舞って、ドラキュラ伯爵家のダンスパーティーへ誘ってくるけれど、今日は気分じゃないの。こんなに素敵な月のない夜なのだもの。  それなのにコウモリったら、あきらめきれないみたい。うるさく私の周りを飛び回ってる。
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