命のバトン

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 出会った場所から更に数分奥へ土手を歩き、階段を使って住宅側へ下りた。  そこから(ツー)ブロック先を曲がった所に彼の家はあった。 「…でか」  玄関脇には二台分の駐車場。その奥には庭がある。両隣に比べ明らかに大きなその家に恐る恐るお邪魔する。  優しそうなお母さんに挨拶をし、そのまま二階にある中村さんの部屋に入った。 「広ッ」  十二畳の部屋には机とベッドしかなくやたらと広く感じた。 「ずっとリュウガがいたから…」  机の上には四年前に十五年の生涯を終えたリュウガの写真が飾ってあった。小学生の頃の中村さんに抱きしめられたリュウガはとても幸せそうに見えた。  中村さんが一階(した)から持って来たリュウガのベッドにフカフカのタオルを敷いた。私はそこへ2匹をそっと下ろした。  優しく撫でてあげると気持ち良さそうに目を閉じる。その姿に自然と溢れ出す涙を拭って、これからの事を話す為に隣にしゃがんだ中村さんを見ると、中村さんも泣いていた。 「あーもう…俺ヤバいよな。こんなに泣くヤツ見た事ないっしょ?」 「ヤバくなんかないです。全然…」 「そう?ココちゃんがそう言ってくれるならいっか…」  そう言って中村さんは笑った。その笑顔に心が温かくなる。
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