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むかつく
むかつくのに無駄に顔がいい。
今、オレは隣のデスクで
黙々と資料を作る上司の几帳面さに
イラつきを抑えられないというのに
その上司の伏せ目がちの瞼の美しさに釘付けになっていた。
なんで、オレが
こんなにあからさまに見つめているのに
集中できるんだろう。
今回、作成している資料の提出期限は短すぎて
提出している人もまばらだ。
提出したところで
上が上の評価を上げる要因でしかないし
事実、仕事の為というより上の為の提出期限だ。
周りもそう思うからこそ必要以上の負荷は負わずに
資料の提出にまで至らないのだろう。
それをなんの躊躇いもなく
確実にクオリティの高い資料をサクサクと仕上げていく・・
こいつは命令に忠実な犬でしかない
犬だ
・・犬め・・・オレはやりたくない・・
と、
「いくか」
犬が資料をまとめてトントンと揃えてオレに渡した。
伸びた背筋がたくましさと清潔感を纏う。
爽やかに微笑んでオレを見る。
芸能人でもないのに歯が白い。
つい、見惚れてしまう。
「あ、部長・・」
オレの背後でふいに犬が言った。
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