第二十八話 拷問

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「あら、ごめんなさい、痛かったかしら。ウフッ、やっぱり可愛いわ」 ちょお待て、来るな、来るな 「愛莉花のハートにズッキュンだぞ」 く、来るなてよ、や、やめい! 「ああん、キミに乗り換えちゃおうかしら。やっぱり不倫は良くないもんね」 何やねん、こいつ、、、メッチャ、キモい、、、 「あの人羽振りは良いんだけどお、時々鼻毛を指でむしって、フーッてするのよお、、、ないわー⤵」 あの人って、誰やねん。知らんわ 愛莉花こと、ボビーは2人兄弟の長男としてこの世に生を受けた。父親は定職にも就かず、昼間から酒を浴びては日常的に彼らの母親に暴力を振るっていた。当然のことながら家は貧しく、ボビーと幼い弟は十分な食事も採れない有り様だった。 育ち盛りのボビー達のため、母親は昼は市場で、夜は内職をして女手一つで彼らを養った。 そんな過酷な生活がいつまでも続くはずもなく、彼女は過労がたたって体調を崩し、終いには生命を落としてしまう。ボビー15歳の春のことだった。 母親が亡くなると父親の暴力の矛先はボビー達に向けられるようになり、弟を庇うボビーの身体には生傷が絶えなかった。 そんなある日、ボビーが学校から帰宅すると弟の泣き叫ぶ声が玄関越しに聞こえて来る。慌てて戸を開けた彼の目に飛び込んだ光景、それは残忍極まりないものだった。そこには弟の髪を鷲掴みにし、喉元に包丁を突きつける父親の姿があった。 その光景を目の当たりにした瞬間、ボビーの頭の中で言い知れぬ何かが弾ける。その後の記憶は彼にはない。気が付いたとき、血塗られた包丁を右手に握り、足元には般若の如き形相で息絶える父親が横たわっていた。 この事件でボビーは少年院に収監され、弟は孤児院に引き取られることになる。少年院でのボビーは弟に会いたい一心で真面目に務め、模範生として出所する。少年院を出所した彼は弟を引き取り養うため、憲兵隊に志願したのだ。 弟との新生活に期待で胸を膨らませるボビーであったが、教官ヤマモトの毒牙が彼に襲いかかる。 あろうことか、ヤマモトは新人歓迎会の席で言葉巧みに酒を勧め、酔って抵抗の出来ないボビーを手籠めにした。ヤマモトの男色は隊内でも有名な話だった。
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