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第二十六話 ケダモノ
「ハァ、ハァ、、、お嬢ちゃん」
「や、やめろ!ユキに乱暴するな!」
「可愛いねえ、、、ハァ、ハァ」
荒い息が髪にかかって動物臭が鼻を覆った。顔を背けるのがやっとだったわ。
「、、、何だよお!」
男は突然不機嫌な顔をしたの。声を荒げると赤黒い手で私のほっぺたを鷲掴みにした。顔を背けられたことがよっぽど気に入らなかったのね。
「可愛い顔、見せておくれよ、、、ハァ、ハァ」
「いやっ!」
力尽くで顔を向かせると満足したみたいで、目を細めて指の力を緩めたわ。私の顔を見ると不気味な笑みを浮かべて声の調子を変えた。
「痛かったかい?君がイケないんだよ、ヒヒッ」
「ユッ、キー!、、、ゲホッ」
男は私の頬っぺたをネットリと撫でだしたの。お兄ちゃんは立ち上がろうとしたけど前屈みになってまた膝を付いたわ。足が言うことを聞かなかったのね。それを見たネモトはお兄ちゃんの頭上に目配せした。お兄ちゃんの後ろにはキトウが立っていたけど、小太り男に気を取られてお兄ちゃんは全然気付いてなかったのよ。
「お兄ちゃん!後ろ、、、後ろよ!」
「なっ!?」
振り返って見上げるよりも速く、キトウは足を蹴り上げると空中で一旦止め、お兄ちゃんの頭めがけて振り下ろした。
ドカッ!
お兄ちゃんは身体を反らせて避けようとしたけど避けられるはずもなく、男の踵が肩を直撃したわ。
「グッ!、、、グオォー!」
衝突の反動で地面に叩きつけられたお兄ちゃん、肩の痛みで地面を転げ回った。
「最初から大人しくしてれば痛い目せずに済んだのによ」
「こいつ、手こずらせやがって」
肩を押さえて仰向けに倒れてるお兄ちゃんを男達は見下ろした。
「ネモト、連れて行け!」
「八ッ!」
キトウの指示に従い、ネモトはお兄ちゃんの首に手のひらを回すと力任せに引き上げた。腕にはミミズのような筋が浮かび、Tシャツの袖は婉曲を描いた筋肉に押し上げられたわ。
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