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第三話 幼馴染み
警報は依然として鳴り続いている。警報とは別の、あの音は一体何だったんだ。空から聞こえていた様に思う。よからぬ不安が頭を掠めた。
「遅いやないか。姿見えへんから心配したんやで」
聞き慣れたその声によって僕の意識は引き戻される。声のしたほうを見ると、タケシが立っていた。
「おう、そこに居たのか」
手を挙げて応えると、タケシも軽く手を上げた。タケシは子供の頃からの友達、いわゆる幼なじみだ。
僕は子供の頃、親の事情でこの町に住む祖父母のもとに預けられた。新しい環境に馴染めず、学校では都会者と揶揄されて冷たく遇らわれる日々を送っていた。そんな中、タケシだけは周りと分け隔て無く接してくれた。歳が近いという事もありすぐに打ち解け、それ以来の仲だ。また、タケシのおかげで町の人々に受け入れられたと言っても言い過ぎではない。親友であり、恩人だ。
「ヒロシさん、良かったご無事で」
タケシの側に立つ、おさげ髪の少女が軽くお辞儀をする。彼女の名前はユキ、タケシの妹だ。
「やあ、ユキちゃん」
二人のほうに歩きながら手を振った。
ユキは僕の四つ歳下で、タケシとは五つ歳の離れた兄妹だ。彼女のことは、妹のように可愛がっている。
慣れない緊張からか、ユキは不安な表情を浮かべていた。僕は彼女を励まそうと、戯けた調子で微笑みかける。
「ごめん、心配させた。ユキちゃん、今日もカワユイね」
ユキはダッフルコートを羽織っている。タケシに借りたのだろう、体のサイズに合っておらず長い袖丈から見え隠れする指先が可愛い。
「も、もう、、、ヒロシさんたら、こんな時に、、、」
ユキは目を逸らせて俯いてしまう。まんざらお世辞ではなかったのだが、まずいことを言ってしまったようだ。僕は後悔した。
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