第五話 Lucy

1/1
前へ
/32ページ
次へ

第五話 Lucy

せっかく誘ってくれたのに悪いことをした。家路を急ぎながら二人に詫びた。それにしてもタケシの勘の鋭さには驚かされる。当てずっぽうに言って鎌を掛けているのだろうが、ドキリとさせられた。そんな事が今までも度々あった。あいつは人の心の中が見えるのかも知れない。 自宅に到着する頃、陽は暮れかけて空は美しい蜜柑色に染まっていた。祖父母が遺してくれた家が僕の住まいだ。町の外れに位置し、住宅に囲まれた閑静な立地である。隣人は高齢者が多く、夜になると人通りはほとんどなくなる。 これは僕にとって好都合な事だ。 門扉を開けると、念の為辺りを見回してから玄関に足を進めた。家に入ると施錠を二度三度確認し、食事は後回しにして彼女の元へと向かう。地下の一室が僕と彼女の部屋になっている。階段は一段踏むごとに軋み音を立てた。 地下室の扉はしっかりと施錠されており、鍵を差し込むと鈍い音を立て解錠された。足早に部屋に入ると内側から手早く錠を掛け、薄暗い部屋に微笑みかけた。 『ただいま、僕のLucy(ルーシー)
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加