ワイルド・ワン〜困り顔のペス〜

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まあ、そんな時代だから、俺なんか学校から帰ったら玄関にランドセルを置いて、ただいまだけ叫んで遊びに行ってたよ。 例えば、三角ベースって知ってるかい?簡単に言えば野球ごっこだ。 9人いなくても出来る。一塁、二塁の次はホームだし、外野は一人だったり、別にいなくてもいい。 グラウンドなんて立派な場所でなくても、空き地でも収穫後の田んぼでも、なんなら広い道路でもいい。 道路は危ないって?そりゃそうだけど、車なんて大通り以外にはほとんど来なかったもの。この街にもまだ信号なんてほとんど無かったし。 たまーに来たって、走って逃げればいいのさ。 お母さんに、ごはんだよー!と呼ばれるまで。 夕焼けが夕闇に変わるまで、毎日みたいにみんなでボールを追いかけていたよ。 ベースは地面に書いたり、適当に何か置いたり。ボールは駄菓子屋でも売ってる柔らかいゴムボール。バットはプラスチック製。なければその辺に落ちてる太い棒とか、真っ直ぐで固けりゃ何でも構いやしない。意外と棒で打った方が良く飛んだりしたな。 パコーン! 情けない音だけど、慣れると『カキーン』よりいい音に聞こえて来るんだ。 「ケンちゃーん!行ったぞー!」 俺はボールを取るのが下手くそでさ、それでも頑張って走るんだけど、時々俺に飛んで来た打球を横取りする名手がいたんだ。 「ワンッ」 
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