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みんながお母さんに呼ばれて帰っても、ユリちゃんはいつも最後まで残ってた。
「ユリちゃんは帰らないの?」
「うん、ペスと遊んでる。また明日ねケンちゃん」
「うん、ペスもまたな!」
俺達がよってたかってちょっと乱暴に撫でても、嬉しそうにペスは尻尾を振ってた。
俺達は子供だったけど、ペスは成犬だったからな。怒っちゃいけないって思ってたんだろう。
そして成犬だから、ユリちゃんといつも一緒にいたんだろう。
ユリちゃんは鍵っ子でさ、お父さんもお母さんも仕事に行ってて、帰って来るのが遅かったんだ。
どっちかって言うと、ペスがユリちゃんを心配して、かわいがっていたのかも。
動物の目って……犬の目って、みんな優しいだろ?
きっとあいつらは強いから、あんな目が出来るんだと思う。
いろんな意味で、あいつらは強い。
だから人を優しい目で見てるんだ。
ペスだけじゃなくて、この頃は普通にどこにでも野良犬がいたんだよ。
みんなで遊んでると仲間に入りたそうに見ていたり、自転車で走ると着いて来たり。
まだ飼ってないのに玄関に番犬みたいに住み着いたりさ。
もちろん犬が怖い子もいたし、俺だって追いかけられて泣きながら帰った事もある。
近所をうろうろしてる黒い犬がいてな、あいつは怖かった。どうやってあいつを避けようかって考えたり。
そうだな、リアルなRPGだな。当時の俺はまだレベルが低かったからな。
でも、「野犬」と「野良犬」はちょっと違うのさ。
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