10人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
「さぁ落ち着いて。あなたはそのまま真っ直ぐに生きて行ってください。
大丈夫です。
あなたの力になってくれそうな方に心当たりがあります。
もしかしたら、あなたももう出会っているかもしれませんね。
慣れないことはしない方が賢明ですよ。
軽い気持ちでやったことでも、一度踏み外したら戻れなくなることもありますから。
逃げたくて逃げたのに、
やっぱり戻りたくなって…
なのに、ここから出ることの出来ない私みたいに」
「出ることの出来ない?
あの、良ければ私の小屋にお茶に来ませんか?今度は私がご馳走したいです」
女性が寂しそうに見えて誘ってみる
「行きたくても行けないのです。私は…ごめんなさい。
さぁさぁもう時間ですよ。
お話し聞かせてくれてありがとう。それじゃあね。このまま真っ直ぐですよ」
女性が扉を開けてくれたので、外へと出た
「ありがとうござい…」
霧がたちこめて、まだ辺りは真っ白だった。
振り向いてお礼を言うつもりが、女性も扉も何も見えなかった
言葉は最後まで発することはできなかった
こんなに酷い霧ならば、方向感覚が狂ってしまう
色々と気になるけれど、女性に言われた通りに、今は真っ直ぐ進むことだけを考えることにした
最初のコメントを投稿しよう!