私の願い

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私の願い

セイレ男爵家から迎えに来た馬車に私が乗るまで、お母様はずっと泣いてた。 何も言わず、只私の手を握り、泣いていた。 その手に幾筋もお母様の涙が零れ落ち、とても胸が熱なり、私は涙を堪えるのに必死だった。 何を言っても詮無い事を理解しているからお母様は、無言で泣くだけだった。 いや、言葉にしてしまえば、より辛くなり、離れたくないとお互い叫んでしまいそうだった。 お母様のご実家デッリョウガ子爵家も由緒ある家柄で、裕福では無いが貴族社会で暮らすには問題ない資産を持ってはいるが、そこからもお父様はかなりの借金をしている。 もう、借りれない程まできている。 子を置いて離縁しろ、と実家からお爺様から言われていると深刻な顔でお母様は教えてくれた。 だが、私やグラスの事を思慮し思い留まってくれているが、私がいなくなればどうなるか不安だった。 お父様は昨夜から友人の屋敷に行き、まだ帰られていない、とお母様が教えてくれた。 お姉様は体調が悪いからと言い、部屋から出てこなかった。 いつもと同じ、お酒を飲みすぎて起きれないのだと思う。 グラスとは朝食をあえて一緒にせず、見送りもいらない、と昨日から説明し為、普段通りに学園に登校させた。 昨夜、2人で話をした。 お母様を頼むわ。 あなたしか側にいない。正直お姉様は役に立たない。嫡男ではなく、息子して、お母様を助けて、見守ってあげて。何かあったら直ぐに教えて。 ・・・泣かないで。男の子でしょ?大丈夫。何かあったら直ぐに帰ってくるわ。 グラスはそれでも泣きじゃくり、私に縋りついた。 でも、決して、 行かないで、とは言わなかった。 それでいい。 私が嫁げば、お金が貰える。 貴方は、そのお金を使い、アッシュ家を再興してくれたらいい。 それが、私の望なのだから。
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