アルゴルの思惑

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――戦時中、各国で大量に所持していた戦闘機や大型の武器はアステリア国の統治下に置かれた際に処分命令が出されたが、処分するにも多大な費用と時間がかかる故、隠し持っていた国が多かった。 平和を取り戻し、使い道がない鉄の塊の処分に困っていた所をデネボラ国の秘密組織が「処分」を買って出て、さらにはその対価として金銭を受け取っていた。 そのやり取りには国の兵士達が絡んでおり、おそらく各国の王も見て見ぬふりをしていたと思われる。 運び出される兵器を見かけた事情を知らぬ民の間では、ひっそりと噂されていた、という状況だ。 「レグルスはまだ使えそうですか?」 アルゴルは「うーん」とソファの背もたれで伸びをして、また前を向いた。 「計画が確実に成功するまでは使うさ。あいつはベガに好意があるみたいだけど…アステリアがデネボラに勝てない現状を知っているからね。大した武力もない平凡な国が、今の俺達に敵うわけがない。あいつの働きに免じてベガの命は取らない約束だ…今のところはね」 ミルファクは話を聞きながら、愉快そうにニタニタと笑う。 「デネボラは強くあらねばならない。父の為にも…。アステリアの配下にいるなんて恥でしかない…! 誰であろうと邪魔者は、殺す」 アルゴルは冷たく言い放った。 どこを見るでもない冷徹な瞳は、その場にいないレグルスの姿を捉えていた――。
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