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「そろそろシリウス様が戻られる頃ですね」
「そうだな、早く会いたい……」
頬に菓子を溜め込んで、うっとりと憧れの君を想うような表情を見せるベガだが、シリウスは彼女の実の弟だ。ベガは2つしか違わない弟に対して、盲目的な愛情を持っていた。
「シリウスは優しいからな~、他国との交渉で泣いて帰って来ないか心配だ」
基本的には友好的な国との外交だけをシリウスに任せているが、無事に顔を見るまでは毎度そわそわと落ち着かない。そんなベガを微笑ましくカストルは眺めていた。
「レグルスは最近いかがですか? 昔よりはベガ様に対して優しくなったかと私は思うのですが……」
「なっとらん!」
お茶のおかわりを入れながらカストルが言うと、素早くベガが反論した。
「いつも膨大な数の書類を短時間で目を通せと言うし、横に張り付いて圧をかけてくるし! 最近は護身術も必要ですとか何とか言って、この私に剣やら銃やらの扱いを叩き込もうとするのだぞ?」
レグルスへの愚痴は止まらない。
カストルが少し呆気に取られていると、壁に付けられた内線が鳴り、用件を聞き終えたカストルはモニターを切った。
「レグルスは少し無愛想ですが、ベガ様を大切にお守りしてくれると思いますよ。……私はそう長くもいられませんし、彼にならベガ様を任せられると……そう思っています」
落ち着いた声で話すカストルをベガは寂しげな表情で見上げた。高齢であることを理由に、女王の執事候補としてレグルスを護衛団から引き抜き、ベガの側に置いたのは彼だった。
何でも卒なくこなすレグルスは執事としても護衛としても最適だった。……思ったより厳しかったが。
「長くない、とか言わないで」
ポツリと不貞腐れたようにベガは呟き、ズズズッとお茶を啜った。
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