心の迷い

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一方、デネボラでは――。 余裕の笑みを浮かべながら、アルゴルがミルファクと食堂にて会話をしていた。 「ベガ様のご様子はいかがでしたか」 「まぁ…賢い子だからね、何が有益か分かった上で判断してくれると思うけど……。結婚がダメになったとしても俺は計画を進めるよ」 皿の上の上質な肉にスッとナイフを入れ、口に運ぶと、とろけ出す旨味に満足そうに頷いた。 「テラ・マーテルを手に入れるには、武力の強化が必要だ。こちらの方が優勢だと知らしめる為にもね。ベガを脅してでも主権を奪い、デネボラを最強の国にする。それが父との誓いだ」 アルゴルはギラギラと目を光らせ、残りの肉にナイフを突き刺した。 アステリアでは戦闘機や武器の製造に使われる鉱物が採れた。戦争が始まるまでは、デネボラ国に兵器製造の為の採掘場所として目をつけられた「アリデッド」という国があったが、全てを搾り取られるようにして滅んでいた。 「お父上もきっと天国からアルゴル様の勇姿を見守っていらっしゃることでしょう」 「…だといいけど。父上は強くて立派な人だった。すべての国のトップに立つのは、父が築き上げてきたデネボラだ……!」 ミルファクが空になったグラスにワインを注いだ。アルゴルはグラスを手に取ると、ミルファクにレグルスへの伝達を命じた。 「あいつの最後の仕事だ……精一杯頑張ってもらわないとな」
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