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「噂とは?」
鋭い目つきでレグルスが聞いた。
「デネボラと他国との間で密かにやり取りが行われているとの噂です。貿易は基本、我が国を通して他国間でのやり取りも可能としていますが、もしかすると武器の密売をしているのでは…と言う話が出ています。国王アルゴルがそれに関わっている可能性も…」
「アルゴル……」
ベガは以前、新たに国王となった彼が挨拶に来た時の事を思い返していた。
黄金色の長髪を毛先で束ね、快活そうな印象の男だったが、会話をしていて時折、獲物を見るような鋭い視線を感じた。
これまで表立っておかしな動きはなかったものの、警戒はしておきたいと思っていた相手だ。
「姉上、どうされます?」
「近々、私もデネボラへ行ってみよう。視察という体で行き、数名を街に潜り込ませておけば、何かしら情報が得られるかもしれん」
ひとまず話はそこで終わり、シリウスはカストルと共に部屋を出て行った。
ベガがソファで腕組みをしながら眉間にシワを寄せ考えていると、レグルスがそっと脇に立った。
「ベガ様……着替えてお休みになって下さい」
「あ……うん、分かった」
気がつけば、すっかり夜になっていた。脱いだマントをレグルスに手渡し、寝室へと向かった。レグルスは着替えの手伝いの為に侍女を呼ぶと部屋から出て行った。
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