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***
「……さ……ま。……様。…ベガ様」
「ひっ!」
――翌朝。
耳元で囁くように聞こえてきた低い声に、途端に目を覚ましたベガが跳ね起きる。
バクバクと高鳴る胸を押さえ、側にいたレグルスに丸く見開いた目を向けた。
「レグルス!! お、お前……女の寝顔を気安く見るでない!! それに、耳元で囁くな!!」
「は?」という表情でベガを見るレグルスは一切動じることなく寝室から移動し、今日の分の書類を机に置くと、また戻って来た。
「今朝はシリウス様と朝食をとられるのでしょう? 早く身支度をしないと、可愛い弟にがっかりされますよ」
「なっ!? がっかりとは何だ! 何で……」
言い返そうと慌ててベッドから下りようとした際、寝間着のワンピースの裾を足先で踏んでしまった。
その拍子に前に倒れそうになる。
「わっ!」
「……っぶない」
落ちかけたところ、レグルスに抱きとめられた。
思わず掴んだ彼の二の腕はとても硬く、服越しに伝わるレグルスの体温が、ベガの小さな手のひらをじんわりと温めた。ベガは途端に耳を赤くし、その手をパッと離した。
「何やってるんですか……大丈夫です?」
呆れたようにレグルスが言う。
ベガは恥ずかしさに顔をさらに赤くして、乱れた寝間着を撫でながら、そっとベッドから離れた。
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